こんにちは!埼玉県さいたま市中央区の行政書士、くりはらです。
最近の「働き方改革」の流れのなかで、「フリーランス」という働き方も増えてきています。
僕もいわゆる「フリーランス=個人事業主」です。
建設業界でも古くから(働き方改革とは全く異なるアプローチですが)「一人親方」という働き方があります。
今回は、そんな「一人親方」について、建設業許可との関係も踏まえて書いていきます。
一人親方とは?
基本的には個人事業主と同じで、
- 税務署への開業届を提出する
- 税金の申告や納付(確定申告)が必要
- 自分で社会保険へ加入しなければならない
個人事業の開業届の提出や毎年の確定申告、社会保険への加入や納税などを全て自分でやる必要があります。
このほか、建設業での「一人親方」特有のものとして、
- 建設工事を請負っている(単なる手伝いではなく、「請負契約」に基くもの)
- 発注者や元請業者、一次請け業者などと請負契約を締結している
- 請負った仕事を自らの責任で完成させること
- あくまで事業主なので、基本的には元請業者の加入する労災保険の適用を受けることができないが、特別加入制度がある
- 従業員=労働者をまったく使用しない、または労働者を使用したとしても年間100日以内に収まっている
が挙げられます。
一人親方として建設工事を施工する場合、民法の「請負契約」に基いて行うことになります。
建設業許可との関係は?
建設業許可を受けていない一人親方の場合は、他の建設業許可のない事業者と同様、「軽微な工事」のみ請負うことができます。
請負った建設工事1件あたりの金額が500万円未満(建築一式工事では1500万円未満又は述べ面積が150m²未満の木造住宅の工事)のもの
一人親方でも建設業許可は取れる?
一人親方といえど事業主なので、要件を満たせば建設業許可を取得することができます。
- 経営についての管理責任者(経営業務の管理責任者)としての経験をもつ者がいること
- 専任の技術者(専任技術者)が営業所ごとにいること
- 適切な社会保険への加入
- 請負契約について誠実性があること
- 請負契約を実際に行うお金があること
- 欠格要件(条件)に当たらないこと
- 営業所があること
このうち経営業務の管理責任者(経管)と専任技術者(専技)は兼任が可能なので、経営業務の管理責任者と専任技術者を一人で満たせるようであれば建設業許可を取得できます。
現場配置技術者はどうしたらいいの?
建設業許可は要件を満たすことができれば、一人親方であっても取得することができます。
しかし、建設業許可業者は工事を請負う際には、現場配置技術者として主任技術者または監理技術者を現場に配置しなければならないとされています。(建設業法第26条)
また、専任技術者は原則として営業所に常勤して専任技術者としての職務に従事していなければならない、とされています。(建設業法第7条第2項)
ですが、一人親方をはじめとする小規模の事業者では、社長一人で経営業務の管理責任者と専任技術者を兼任し、更に現場にも出なければならない、なんていうことはザラにあります。
適正に法を遵守することを考えたら、主任技術者となる技術者を雇って現場配置をするのが理想ではあります。ですが、様々な事情で新たに人を雇うことができないことも多いのが実情です。
「専任技術者の専任性の緩和」っていうのがあるの
では、どうしたらいいのか?ですが、「専任技術者の専任性の緩和」という措置が例外的にとられています。
現在、国土交通省では一定の条件を満たす場合に専任技術者も現場の技術者として配置できるように配慮しています。(国総建第18号、建設業法第26条)
- 専任技術者のいる営業所において請負契約が締結されたもの
- 工事現場とその営業所が近接していて、常時連絡を取りうる体制にあるもの
- 当該工事が、請負金額が3,500万円以上(建築一式工事は7,000万円以上)の公共性のある施設等に関する重要な建設工事に該当しないこと
②については、判断が難しい面がありますが、事業年度終了報告書(決算変更届)などで作成する「工事経歴書」の記載から問題があれば指摘される可能性があります。
また、この取扱いは例外的なものであるためいつ変更されるかはわかりません。
この取扱いが認められなくなったときに困ってしまわないように、新たな技術者の雇い入れや、若手従業員の育成などの準備が必要かと思います。
建設業許可を取るには「社会保険」への加入も大事です!
また、近年建設業許可業者や建設業許可新規申請者に対して、健康保険や年金などの社会保険、労働保険への加入についても厳しく指導がされています。
令和2年10月1日に改正された建設業法施行規則にて、「適切な社会保険への加入」が許可の要件とされるに至りました。
この改正によって、これまで行政指導にとどまっていた社会保険への加入が建設業許可を受けるための必須条件となりました。
しかしながら、個人事業主では
- 健康保険・厚生年金:従業員が5人以上は加入しなければならない
- 雇用保険:従業員が1人でもいれば加入しなければならない
とされているため、上記に該当しなければ影響がありません。
この社会保険加入の要件化については別途詳しく記事にしていますので、そちらをご参照ください。
まとめ
ここまで「一人親方と建設業許可」について書いてきました。
要点としては、
- 一人親方は個人事業主
- 請負契約に基いて工事をする
- 要件を満たせば建設業許可も取れる
建設業許可を取得する際の注意事項もチェックしておきましょう。
最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。