今回は、経営事項審査における総合評定値(P点)での評点の一つである「完成工事高評点(X1)」についてです。
経営事項審査制度の全体像については↓の記事をご覧ください。
こちらの記事で、総合評定値(P点)は5つの要素からそれぞれのウエイトに基づいて計算されるものである、と説明をしたところです。そして、この5つの要素のひとつである「完成工事高評点(X1)」を今回の記事では詳しくみていきます。
さて、この完成工事高評点(X1)は、以前は経営事項審査においてかなり大きなウエイトを占めていました。平成20年の法改正前までの割合は、実に総合評定値(P点)の35%ものウエイトを占めていたほどです。
現在ではこの割合は25%へ緩和されてはいますが、その重要度は変わることはありません。
完成工事高(X1)評点とは?
企業の事業規模を測るものとして「売上高」が用いられるのは広く知られており、建設業界も例外ではありません。建設業界での「売上高」=「工事の売上高」を特に「完成工事高」と呼んでいます。
この「完成工事高」を建設業許可を受けた種類ごとに評点を求めます。
完成工事高の評価には平均値を用いる
経営事項審査では、この「完成工事高」に総合評定値(P点)の25%ものウエイトを与えて評価を行っていることは先に書いた通りです。そして、「完成工事高評点(X1)」の算定には、許可を受けた業種ごとに、直近の決算(審査基準日)を含む「2年平均」又は「3年平均」の数値をもって評価が行われます。
つまり、完成工事高(X1)評点では、許可を受けている工種ごとの完成工事高である「工事種類別完成工事高」について「2年平均」又は「3年平均」の数値をもって評価が行われます。
また、「工事種類別完成工事高」とは別に「元請完成工事高」も同様に算定し、「技術職員数および元請完成工事高評点(Z)」で評価されます。
なお、総合評定値(P点)は許可を受けた工種ごとに請求しますが、許可を受けている工種の全てで受けなければならないものではありません。自社の受注状況や地域ごとの公共工事発注状況などを見極め、必要な工種で総合評定値(P点)請求を行うといいでしょう。
激変緩和措置
この「2年又は3年平均」の完成工事高は、自社にどちらか有利な数値を選ぶことができます。このように複数の年度の平均値を用いるようにした理由は、工期の長い建設工事を受注したときなどの場合に、売上高が年ごとに上下に大きく振れてしまう状態を緩和するためで、「自己資本額および平均利益額(X2)評点」と併せて「激変緩和措置」と呼ばれます。
完成工事高の平均値は、2年か3年を選ぶことができますが、そのどちらを選んだ場合でも、2年平均と3年平均を混ぜて利用することはできません。
- 許可を受けた全業種での「工事種類別完成工事高」「元請完成工事高」それぞれ2年平均
- 許可を受けた全業種での「工事種類別完成工事高」「元請完成工事高」それぞれ3年平均(全業種)
の2パターンからどの工種の総合評定値(P点)を良くしたいかで選ぶこととなります。
完成工事高(X1)評点の算定方法
完成工事高(X1)評点の算定ですが、これまで書いてきた「工種ごとの年間完成工事高の2年平均又は3年平均」の金額に応じて、1,000万円未満~1,000億円以上まで、42の区分に分けて計算を行います。
その区分と計算式は以下のとおりです。
区分 | 工事種類ごとの年間平均完成工事高 | 評点 | |
1 | 1,000億円 | 2,309 | |
2 | 800億円以上 | 1,000億円未満 | 114×(年間平均完成工事高)÷20,000,000+1,739 |
3 | 600億円以上 | 800億円未満 | 101×(年間平均完成工事高)÷20,000,000+1,791 |
4 | 500億円以上 | 600億円未満 | 88×(年間平均完成工事高)÷10,000,000+1,566 |
5 | 400億円以上 | 500億円未満 | 89×(年間平均完成工事高)÷10,000,000+1,561 |
6 | 300億円以上 | 400億円未満 | 89×(年間平均完成工事高)÷10,000,000+1,561 |
7 | 250億円以上 | 300億円未満 | 75×(年間平均完成工事高)÷5,000,000+1,378 |
8 | 200億円以上 | 250億円未満 | 76×(年間平均完成工事高)÷5,000,000+1,373 |
9 | 150億円以上 | 200億円未満 | 76×(年間平均完成工事高)÷5,000,000+1,373 |
10 | 120億円以上 | 150億円未満 | 64×(年間平均完成工事高)÷3,000,000+1,281 |
11 | 100億円以上 | 120億円未満 | 62×(年間平均完成工事高)÷2,000,000+1,165 |
12 | 80億円以上 | 100億円未満 | 64×(年間平均完成工事高)÷2,000,000+1,155 |
13 | 60億円以上 | 80億円未満 | 50×(年間平均完成工事高)÷2,000,000+1,211 |
14 | 50億円以上 | 60億円未満 | 51×(年間平均完成工事高)÷1,000,000+1,055 |
15 | 40億円以上 | 50億円未満 | 51×(年間平均完成工事高)÷1,000,000+1,055 |
16 | 30億円以上 | 40億円未満 | 50×(年間平均完成工事高)÷1,000,000+1,059 |
17 | 25億円以上 | 30億円未満 | 51×(年間平均完成工事高)÷500,000+903 |
18 | 20億円以上 | 25億円未満 | 39×(年間平均完成工事高)÷500,000+963 |
19 | 15億円以上 | 20億円未満 | 36×(年間平均完成工事高)÷500,000+975 |
20 | 12億円以上 | 15億円未満 | 38×(年間平均完成工事高)÷300,000+893 |
21 | 10億円以上 | 12億円未満 | 39×(年間平均完成工事高)÷200,000+811 |
22 | 8億円以上 | 10億円未満 | 38×(年間平均完成工事高)÷200,000+816 |
23 | 6億円以上 | 8億円未満 | 25×(年間平均完成工事高)÷200,000+868 |
24 | 5億円以上 | 6億円未満 | 25×(年間平均完成工事高)÷100,000+793 |
25 | 4億円以上 | 5億円未満 | 34×(年間平均完成工事高)÷100,000+748 |
26 | 3億円以上 | 4億円未満 | 42×(年間平均完成工事高)÷100,000+716 |
27 | 2億5,000万円以上 | 3億円未満 | 24×(年間平均完成工事高)÷50,000+698 |
28 | 2億円以上 | 2億5,000万円未満 | 28×(年間平均完成工事高)÷50,000+678 |
29 | 1億5,000万円以上 | 2億円未満 | 34×(年間平均完成工事高)÷50,000+654 |
30 | 1億2,000万円以上 | 1億5,000万円未満 | 26×(年間平均完成工事高)÷30,000+626 |
31 | 1億円以上 | 1億2,000万円未満 | 19×(年間平均完成工事高)÷20,000+616 |
32 | 8,000万円以上 | 1億円未満 | 22×(年間平均完成工事高)÷20,000+601 |
33 | 6,000万円以上 | 8,000万円未満 | 28×(年間平均完成工事高)÷20,000+577 |
34 | 5,000万円以上 | 6,000万円未満 | 16×(年間平均完成工事高)÷10,000+565 |
35 | 4,000万円以上 | 5,000万円未満 | 19×(年間平均完成工事高)÷10,000+550 |
36 | 3,000万円以上 | 4,000万円未満 | 24×(年間平均完成工事高)÷10,000+530 |
37 | 2,500万円以上 | 3,000万円未満 | 13×(年間平均完成工事高)÷5,000+524 |
38 | 2,000万円以上 | 2,500万円未満 | 16×(年間平均完成工事高)÷5,000+509 |
39 | 1,500万円以上 | 2,000万円未満 | 20×(年間平均完成工事高)÷5,000+493 |
40 | 1,200万円以上 | 1,500万円未満 | 14×(年間平均完成工事高)÷3,000+483 |
41 | 1,000万円以上 | 1,200万円未満 | 11×(年間平均完成工事高)÷2,000+473 |
42 | 1,000万円未満 | 131×(年間平均完成工事高)÷10,000+397 |
最後に、完成工事高(X1)評点を総合評定値(P点)に換算します。
完成工事高(X1)評点の総合評定値(P点)に占めるウエイトは25%なので、↑の表を使って求めた評点に0.25を掛けて総合評定値(P点)へと換算します。
ここで、完成工事高(X1)評点の総合評定値(P点)への換算方法をなるべくカンタンに記載しておきます。
- 工種ごとの平均完成工事高を確定する
- ↑の平均完成工事高を区分表に当てはめて完成工事高(X1)評点を算出する
- 完成工事高(X1)評点に0.25をかけて総合評定値(P点)へと換算する
以上のように計算していきます。
なお、完成工事高(X1)評点では、その金額が大きくなればなるほど評点も高くなるように設計されています。特に、5億円ほどまでは金額のレンジが細かく刻まれており、中小の建設業者間での評点差がハッキリと表れるようになっています。
まとめ
今回は、完成工事高(X1)評点について
- 完成工事高(X1)評点とは何か
- 完成工事高(X1)評点の算定方法
を詳しく書いてきました。ホントは「完成工事高(X1)評点のアップ方法」についても書きたかったのですが、あまりに長くなってしまうため別の機会に書くことにします。
最後までお読みいただきありがとうございました。