こんにちは!さいたま市中央区の行政書士、くりはらです。
最近、上野動物園の赤ちゃんパンダ「シャンシャン」のライブ映像にはまってます。大体開園時間中はやっているんですが、もう!可愛いのなんのって!午後なんてほとんどお昼寝してるし。(※現在は終了しています)
さて、前置きはこのぐらいにして、今日のテーマ「書面による契約」についてです。
建設業法では、請負契約を締結する際には書面による契約が義務付けられています。これは「発注者と元請業者」、「元請業者と下請業者」どちらにも妥当します。
下で詳しく解説しますが、元請業者と下請業者で交わされることが多い「注文書・請書」による受託には、あらかじめ「基本契約書」を取り交わすか、注文書ごとに「基本契約約款」を添付する必要があります。
※ちょっと長い記事なので、お時間のない方は、下のもくじから気になる部分だけお読みください。あと、先に「まとめ」を書いちゃいます。
まとめ
というワケで、今回の記事のまとめですが、
- 建設工事の契約には契約書が必要!
- 注文書・請書による契約には「基本契約書」又は「基本契約約款」が必要!
- 追加工事や工期変更があった場合にも契約書が必要!
です。
非常に長ーい記事ですが、要約するとこうなります。はい。
たったこれだけですが、甘くみると痛い目にあいます。転ばぬ先の杖として、「契約書」をうまく活用してください。
また、「追加工事」や「工期変更」にもうまく対応できる契約書を作っておけば、イザというときに迅速に対応でき、元請業者や発注元からも大きな信頼を獲得できます。
それでは、詳しく解説していきます。
\建設業者様向け請負契約についての記事まとめはこちら/
書面による契約締結
契約は下請工事の着工前に書面により行うことが必要
建設工事の請負契約の当事者である元請負人と下請負人は、対等な立場で契約することが理想的です。
契約をするにあたっては、建設業法第19条第1項により以下にさだめられた事項を書面に記載し、署名又は記名押印をして相互に交付しなれければなりません。また、契約書の交付については災害時等でやむを得ない場合を除き、原則として下請工事の着工前に行わなければなりません。
- 工事内容(下請負人の責任施工範囲、施工条件を具体的に定める。「○○工事一式」等のあいまいな表現は避ける)
- 請負代金の額
- 工事着手の時期・工事完成の時期
- 請負代金の全部又は一部の前金払、又は出来形部分に対する支払の定めをするときは、その支払の時期又は方法
- 当事者の一方から設計変更・工事着手の延期・工事の全部や一部の中止の申し出があった場合における工期の変更、請負代金の額の変更又は損害の負担及びそれらの額の算定方法に関する定め
- 天災その他不可抗力による工期の変更又は損害の負担及びその額の算定方法に関する定め
- 価格等(物価統制令(昭和21年勅令第118号)第2項に規定する価格等をいう。)の変動若しくは変更に基づく請負代金の額又は工事内容の変更
- 工事の施工により第三者が損害を受けた場合における賠償金の負担に関する定め
- 注文者が工事に関する資材を提供し、又は建設機械その他の機械を貸与するときは、その内容及び方法に関する定め
- 注文者が工事の全部又は一部の完成を確認するための検査の時期及び方法並びに引渡しの時期
- 工事完成後における請負代金の支払の時期及び方法
- 工事の目的物の瑕疵を担保すべき責任又は当該責任の履行に関して講ずべき保証保険
- 契約の締結その他の措置に関する定めをするときは、その内容
- 各当事者の履行の遅滞その他債務の不履行の場合における遅延利息、違約金その他の損害金
- 契約に関する紛争の解決方法
※下記の一定規模以上の解体工事については、契約書面に①~④の事項を記載する必要があります。
建築物に係る解体工事 |
当該建築物(当該解体工事に係る部分に限る)の床面積の合計が80平方メートル |
建築物に係る新築又は増築の工事 | 当該建築物(増築の工事にあっては、当該工事に係る部分に限る)の床面積の合計が500平方メートル |
建築物に係る新築工事等(上記2を除く) | 請負代金の額が1億円 |
建築物以外のものに係る解体工事又は新築工事等 | 請負代金の額が500万円 |
- 分別解体等の方法
- 解体工事に要する費用
- 再資源化等をするための施設の名称及び所在地
- 再資源化等に要する費用
注文書・請書による請負契約を締結する場合
冒頭に述べましたが、「注文書・請書」による発注の場合、「注文書・請書」以外にも書面を用意する必要があります。2つのパターンに分けられるので、それぞれみていきましょう。
パターン①基本契約書を取り交わす
- 基本契約書には上の④~⑭までの事項を記載(注文書・請書に個別に記載される事項は除く)し、当事者の署名又は記名押印をして相互に交付する
- 注文書・請書には、上の①~③まで、その他必要な事項を記載する。
- 注文書・請書には、それぞれ注文書・請書に記載されている事項以外の事項については基本契約書の定めによるべきことが明記されていること。
- 注文書には注文者、請書には請負者がそれぞれ署名又は記名押印をすること
パターン②注文書・請書の交換のみ
- 注文書・請書のそれぞれに、同一の内容の契約約款を添付又は印刷すること
- 契約約款には、上の④~⑭までの事項を記載(注文書・請書に個別に記載される事項は除く)すること
- 注文書・請書と契約約款が複数枚に及ぶ場合には、割印を押すこと
- 注文書・請書の個別的記載欄には、上の①~③まで、その他必要な事項を記載すること
- 注文書・請書の個別的記載欄には、それぞれの個別的記載欄に記載されている事項以外の事項については契約約款の定めによるべきことが明記されていること
- 注文書には注文者、請書には請負者がそれぞれ署名又は記名押印をすること
補足
上記の補足事項として、
- 電子契約も可能
- 建設工事標準下請負契約約款又はこれに準ずる内容の契約書による契約を締結することが基本
- 下請負人に一方的に義務を課したり、過大な負担を強いる内容は建設業法上不適当と判断されるおそれがあります。
追加工事等に伴う追加・変更契約
工事を進めるにあたって、追加工事が発生すること、ありますよね?そんなときにも
追加工事等の着工前に書面による契約変更が必要
追加工事等の発生によって当初の請負契約書に記載する事項を変更するときは、建設業法第19条第2項により、追加工事等の着工前にその変更内容を書面に記載して、署名又は記名押印をしたうえで相互に交付しなければなりません。
当初契約がその後の追加工事等によって、簡単に変えられてしまってはそもそも契約書を取り交わす意味がなくなってしまいます。それを避けるために規定されていると考えられます。
追加工事等の内容が直ちに確定できない場合の対応
ですが、いちいち変更内容等が確定するのを待っていては工事が遅れていってしまいます。
このように、追加工事等の全体数量等の内容がその着工前の時点では確定できない等の理由により、追加工事等の依頼に際してその都度追加・変更契約を締結することが不合理な場合は、元請負人は、
- 下請負人に追加工事等として施工を依頼する工事の具体的な作業内容
- 当該追加工事等が契約変更の対象となること及び契約変更等を行う時期
- 追加工事等に係る契約単価の額
を記載した書面を追加工事等の着工前に下請負人と取り交わすこととし、契約変更等の手続きについては、追加工事等の全体数量等の内容が確定した時点で遅滞なく行うものとする。
注意事項
- 元請負人が合理的な理由なく下請工事の契約変更を行わない場合
- 追加工事等の費用を下請負に負担させる
ような場合には建設業法違反のおそれがありますので、注意してください。
工期変更に伴う変更契約
工期の変更も基本は着工前に書面による契約変更が必要
元請負人と下請負人は、工期変更により当初の請負契約書に掲げる事項を変更するときは、当初の契約を締結した際と同様に工期変更にかかる工事の着工前にその変更の内容を書面に記載し、署名又は記名押印をして相互に交付しなければなりません。
着工後に工期が変更になった場合、追加工事の内容や変更後の工期が直ちに確定できない場合
- 工事に着手した後に工期が変更になった場合は、契約変更等の手続きについては、変更後の工期が確定した時点で遅滞なく行う。
- 工期を変更する必要があると認めるに至ったが、変更後の工期の確定が直ちにできない場合には、工期の変更が契約変更等の対象となること、契約変更等を行う時期を記載した書面を、工期を変更する必要があると認めた時点で下請負人と取り交わすこととし、契約変更等の手続きについては、変更後の工期が確定した時点で遅滞なく行うものとする。
注意事項
- 下請負人に責任がないにもかかわらず、工期が変更になり、これを原因として下請費用が増加したが、元請負人がその旨の契約変更を行わない場合
- 下請負人に責任がないにもかかわらず、工期が変更になり、これを原因として下請費用が増加したが、その費用の増加分を下請負人に負担させる場合
このような場合には、建設業法違反のおそれがありますので、注意してください。
今回のブログはここまで。長々とお付き合いいただき、ありがとうございました。
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