こんにちは!埼玉県さいたま市中央区の行政書士、くりはらです。 今回は、だれもが避けて通りたい(?)請負代金の支払についてです。
請負契約の代金の支払については、原則となる民法では、目的物(完成品)の引渡しと同時に行うことなります。 しかし、建設業法では、建設業の特徴的な産業構造である請負契約が多重的な請負関係などを考慮して民法の原則に修正を加えています。
また、入金→支払のサイクルにおいて、どうしても支払が先行してしまう建設業ではありがち、かつ、問題となりやすい「支払留保・支払遅延」について、さらに、近年あまり使われることがなくなった「手形」、そのなかでも回収サイトが長い「長期手形」についても書いていきます。
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建設業での請負契約における支払の原則
下請代金については、元請負人と下請負人の合意により交わされた下請契約に基づいて適正に支払われなければなりません。
また、建設業法第24条の3では、元請負人が注文者から請負代金の出来形部分に対する支払又は工事完成後における支払を受けたときは、下請負人に対して、元請負人が支払を受けた金額の出来形に対する割合及び下請負人が施工した出来形部分に相応する下請代金を、支払を受けた日から1か月以内で、かつ、できる限り短い期間内に支払わなければならないと定められています。
さらに、建設業法第24条の6では、元請負人が特定建設業者であり下請負人が一般建設業者(資本金の額が4,000万円以上の法人を除く)である場合、発注者から工事代金の支払があるか否かにかかわらず、下請負人が引渡しの申出を行った日から起算して50日以内で、かつ、できる限り短い期間内において期日を定め下請代金を支払わなければならないと定められています。
そのため、特定建設業者の下請代金の支払期限については、注文者から出来高払又は竣工払を受けた日から1か月を経過する日か、下請負人が引渡しの申出を行った日から起算して50日以内で定めた支払期日のいずれか早い期日となる計算です。
なお、建設業者は、下請工事の目的物の引渡しを受けた年月日を記載した帳簿を備え、一定期間保存しなければなりません。
支払留保・支払遅延
支払留保・支払遅延の注意点は以下の2つです。
正当な理由がない長期支払留保は建設業法に違反
工事が完成し、元請負人の検査及び引渡しが終了後、正当な理由がないにもかかわらず長期間にわたり保留金として下請代金の一部を支払わないことは、建設業法第24条の3「下請代金の支払」又は第24条の6「特定建設業者の下請代金の支払期間等」に違反となります。
下請代金をできるだけ早期に支払うこと
元請負人が特定建設業者か一般建設業者かを問わず、また、下請負人の資本金の額を問わず、元請負人は下請負人に対し下請代金の支払はできるだけ早期に行うことが望ましい、とされています。
長期手形
建設業法第24条の6第3項では、元請負人が特定建設業者であって、下請負人が資本金4,000万円未満の一般建設業者である場合、下請代金の支払にあたって一般の金融機関による割引を受けることが困難であると認められる手形を交付してはならない、とされています。
特定建設業者が注文者となつた下請契約(下請契約における請負人が特定建設業者又は資本金額等が政令で定める金額以上の法人であるものを除く。以下この条において同じ。)における下請代金の支払期日は、前条第二項の申出の日(同項ただし書の場合にあつては、その一定の日。以下この条において同じ。)から起算して五十日を経過する日以前において、かつ、できる限り短い期間内において定めなければならない。
3 特定建設業者は、当該特定建設業者が注文者となつた下請契約に係る下請代金の支払につき、当該下請代金支払期日までに一般の金融機関(預金又は貯金の受入れ及び資金の融通を業とするものをいう。)による割引を受けることが困難であると認められる手形を交付してはならない。
割引を受けることが困難な長期手形の交付は建設業法に違反
元請負人が手形期間120日を超える長期手形を交付した場合は、「割引を受けることが困難である手形の交付」と認められる場合があり、その場合には建設業法第24条の6第3項に違反となります。
下請代金の支払は、できる限り現預金で支払おう
下請代金の支払については、手形等で支払う場合にはその現金化にかかる割引料等のコスト、回収サイトの短期化を意識することが重要です。本来であればなるべく現金・預金にて支払をすることが望ましいです。
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