こんにちは!埼玉県さいたま市中央区の行政書士、くりはらです。
今回のテーマは「やり直し工事」です。
\建設業者様向け請負契約についての記事まとめはこちら/
やり直し工事とは?
建設工事においては、工事のやり直しが発生することもあるかと思います。これを「やり直し工事」と呼んでいます。そりゃそうだ。 この「やり直し工事」が発生したときに、元請下請間での費用負担をどうするか?ということが問題となります。
費用負担は元請負人・下請負人のどちらがしなければならないのか?どういった場合にそうなるのか? これを把握しておかないと、あとあとトラブルを招きかねないので注意が必要です。
やり直し工事の費用は誰が負担するべき?
やり直し工事が発生した場合の費用は元請負人と下請負人のどちらが負担するべきか?ということを決めるためには判断基準が必要になります。
その判断基準とは、「下請負人の責めに帰すべき理由」があるか、ないか、です。
- 「下請負人の責めに帰すべき理由がある」場合=下請負人の負担
- 「下請負人の責めに帰すべき理由がない」場合=元請負人の負担
カンタンにまとめるとこのようになります。
それでは、「下請負人の責めに帰すべき理由」?、それが「ある」場合、「ない」場合それぞれどうしたらいいか?、どういった場合に建設業法違反にあたるのか?といった疑問があるかと思いますので、以下に解説していきたいと思います。
「下請負人の責めに帰すべき理由」ってなに?
この「下請負人の責めに帰すべき理由」ですが、これは、「やり直し工事の発生が下請負人の施工に原因がある=下請負人が責められるような理由」を意味します。
つまり、やり直し工事の発生した原因が、その工事を施工した下請負人の施工が契約書に記載された内容とちがったり、下請負人の施工に瑕疵(キズ=不良部分)があったりした、というところにある場合に、「下請負人の責めに帰すべき理由がある」ということができます。
「下請負人の責めに帰すべき理由がある」場合
さきほど、費用負担について 「下請負人の責めに帰すべき理由がある」場合=下請負人の負担 と説明しましたが、
「下請負人の責めに帰すべき理由がある」として、元請負人が費用を全く負担することなく、下請負人に対して工事のやり直しを求めることができるのは、下請負人の施工が契約書面に明示された内容と異なる場合又は下請負人の施工に瑕疵等がある場合に限られますので、注意が必要です。
なお、次の場合には、元請負人が費用の全額を負担することなく、下請負人の施工が契約書面と異なること又は瑕疵等があることを理由としてやり直しを要請することは認められません。
- 下請負人から施工内容を明確にするよう求めがあったにもかかわらず、元請負人が正当な理由なく施工内容等を明確にせず、下請負人に継続して作業を行わせ、その後、下請工事の内容が契約内容と異なるとする場合
- 施工内容について下請負人が確認を求め、元請負人が了承した内容に基づき下請負人が施工したにもかかわらず、下請工事の内容が契約内容と異なるとする場合
つまり、施工内容が契約内容とちがってしまった原因が、元請負人にもある場合といえます。
「下請負人の責めに帰すべき理由がない」場合
では逆に、「下請負人の責めに帰すべき理由がない」場合です。 この場合は、元請負人としてはどういった対応をする必要があるのでしょうか?
下請負人の責めに帰さないやり直し工事を下請負人に依頼する場合は、契約変更が必要
下請負人の責めに帰すべき理由がないのに、下請工事の施工後に、元請負人が下請負人に対して工事のやり直しを依頼する場合には、元請負人は速やかにそのやり直し工事に必要となる費用について元請下請間で十分に協議した上で、契約変更を行う必要があります。 元請負人が、このような契約変更を行わず、当該やり直し工事を下請負人に施工させた場合には、建設業法第19条第2項「追加工事に伴う追加・変更契約」に違反することとなります。
下請負人の一方的な費用負担は建設業法に違反するおそれ
下請負人の責めに帰すべき理由がないのに、その費用を一方的に下請負人に負担させるやり直し工事によって、下請代金の額が、当初契約工事及びやり直し工事を施工するために「通常必要と認められる原価」に満たない金額となる場合には、当該元請下請間の取引依存度等によっては、建設業法第19条の3「不当に低い請負代金の禁止」に違反するおそれがあります。
また、上記建設業法第19条第2項「追加工事に伴う追加・変更契約」及び第19条の3「不当に低い請負代金の禁止」に違反しない場合であっても、やり直し工事により、元請負人が下請負人の利益を不当に害した場合には、その情状によっては、建設業法第28条第1項第2号「請負契約に関する不誠実な行為」に該当するおそれがありますので、注意が必要です。
まとめ
最初のほうでも書きましたが、「やり直し工事」に潜む問題点として、やり直し工事をやるとして、「費用負担」をどうするのか、ということが挙げられます。
そして、その費用を元請と下請のどちらが負担するのか、という判断基準となるのが「下請負人の責めに帰すべき理由」があるのかないのか、ということでした。
これは、
- 「下請負人の責めに帰すべき理由がある」場合=下請負人の負担
- 「下請負人の責めに帰すべき理由がない」場合=元請負人の負担
とすることが基本の考え方となります。
その詳しい解説は本文をお読みいただければと思います。
最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。
もし契約関係や契約書についてのお悩みがあれば、以下よりお気軽にお問い合わせください。
最後までお読みいただきありがとうございました。
\建設業者様向け請負契約についての記事まとめはこちら/