こんにちは。埼玉県さいたま市中央区の建設手続行政書士、くりはらです。
今回は「技能実習生と建設業許可と建設キャリアアップシステム」についてです。
今や切っても切れない関係となっている建設業と技能実習生。自社の仕事を手伝ってもらいつつ、身に着けてもらった技術が技能実習生が帰国後も彼ら・彼女らの母国で生かされるという意味で有意義な制度ではありますが、悪いニュースになってしまうような問題が生じてしまうのも事実です。
技能実習制度がはらむ問題点をあげつらうとキリがなく、またここで論じることは今回の記事のテーマからずれてしまうので置いておき、令和2年1月1日から技能実習について、建設業での取り扱いが変更されましたので、このことのみにフォーカスしてお伝えしていきたいと思います。
技能実習生に来てもらうのに建設業許可が必要?
建設業者について、令和2年1月1日から新規に技能実習生に来てもらうためには、以下の基準に適合していることが必要となりました。
- 申請者が建設業法第3条の許可(建設業許可)を受けていること(※許可を受けた建設業の種類と技能実習の職種は、必ずしも一致している必要はありません。)
- 申請者が建設キャリアアップシステムに登録していること
- 技能実習生を建設キャリアアップシステムに登録すること
- 技能実習生に対し、報酬を安定的に支払うこと
このうち「技能実習生に対し、報酬を安定的に支払うこと」という基準ですが、だいぶあいまいな表現になってしまっていますので詳しく解説します。建設業許可については別にまとめてありますので、下記リンクをご確認ください。
さて、「技能実習生に対し、報酬を安定的に支払うこと」という基準ですが、技能実習生への報酬については「月給制」とすることが必要となりました。建設業界において、給与体系として日給制がスタンダードであろうと思います。このような給与体系の場合、繁忙期や閑散期に収入の増減が大きく、技能実習生を迎え入れるにあたって事前に予定した報酬額を下回ってしまうことも考えられます。このような状況が引き起こされたときに懸念されるのが技能実習生のやる気の低下や、少なくなった報酬を補てんするために犯罪に手を染めてしまうことです。そういったことを未然に防ぐために「月給制」とすることが求められるにいたりました。
また、これら4つの基準に加えて、受入可能な技能実習生の人数についても新たな基準が定められました。
受入可能な技能実習生の人数
技能実習生を受け入れる際に可能な人数については「技能実習生の数が常勤職員の総数を超えないこと(優良な実習実施者・監理団体は免除)」とされました。
いつから?
この「建設業許可の取得、事業者・技能実習生の建設キャリアアップシステムへの登録、報酬の安定的支払」での基準について、令和2年1月1日から適用が開始されますが、技能実習計画の種類によって段階的に適用されるようになります。
具体的には
- 第1号技能実習計画の認定申請:令和2年(2020年)1月1日から
- 第2号技能実習計画の認定申請:令和3年(2021年)1月1日から
- 第3号技能実習計画の認定申請:令和5年(2023年)1月1日から
それぞれの日付以降に外国人技能実習機構が認定申請を受理したときとなります。なお、これらの基準日より前に認定申請をする技能実習計画については、この基準は適用されません。(※郵送の遅延等により、基準日後に技能実習計画が受理された場合には、新たな基準が適用されることとなります。)
また、受入可能な技能実習生の人数についても「令和4年(2022年)4月1日時点」で、技能実習生の総数が常勤の職員の総数以下となっていることが必要となります。
どうして?
この新たな基準が定められた背景として、国土交通省では
- 建設業では、従事することとなる工事によって就労場所が変わるため現場ごとの就労監理が必要となることや、季節や工事受注状況による仕事の繁閑で報酬が変動するという実態を踏まえ、技能実習生の適正な就労環境を確保する必要があります。
- 令和元年4月から、改正入管法による新たな在留資格(特定技能)の運用が開始されたことを受け、技能実習制度においても新制度との整合性を図りながら、適正な運用を図る必要が生じたところです。
という2点が挙げられています。
さいごに
今回は「技能実習生と建設業許可と建設キャリアアップシステム」について書いてきました。
冒頭にも書きましたが、今や建設業と技能実習生は切っても切れない関係となりました。さらに、技能実習に加えて「特定技能」という制度も始まり、外国人と建設業との関りはより深いものになっていくことが考えられます。
雇用・採用の問題を抱える建設業界にとって、これらの制度は今ある仕事を止めないためにも必要な制度となりえます。しかし、これまでの歴史のなかで培われてきた日本の高度な建設技術の伝承などを考えると、技能実習や特定技能に安易に頼ってもいられないのではないかと私は考えています。
雇用問題を解決するには、働き方改革はもちろん、IT技術を取り入れ業務の効率化を図ることや自社の収益構造の見直しなど、総合的な施策が必要となってきます。建設業の経営について少しでもお悩みがありましたら、当事務所までお気軽にご相談ください。
最後までお読みいただきありがとうございました。