こんにちは!埼玉県さいたま市中央区の建設手続行政書士、栗原です。
今回の記事は「建設業の経理の状況(W5)とは?」です。
経営事項審査には、いくつかの審査項目があることは本サイトでもお伝えしたとおりですが、このうち「その他の審査項目(社会性等)」いわゆる「W評点」は現在9項目にわけられています。
この記事はその「W評点」の一つである「建設業の経理の状況(W5)」について書いていきます。
「経営事項審査(経審)の全体像」と「その他の審査項目(社会性等)W評点」については↓の記事をご参照ください。
建設業の経理の状況(W5)
「建設業の経理の状況(W5)」では、建設業者の経理が適切に行われているかを評価するものです。
「建設業の経理の状況(W5)」の評価項目は、「監査の受審状況」「公認会計士等の数」の二つからなります。
監査の受審状況
「監査の受審状況」では、次の3つに該当するかどうかで評価を行います。
- 会計監査人の設置
- 会計参与の設置
- 経理責任者による自主監査
それぞれ解説していきます。
会計監査人の設置
「会計監査人の設置」では、監査法人や公認会計士を「会計監査人」として会社に置いている場合に加点されます。
このような会社は「会計監査人設置会社」と呼ばれ、登記簿(登記事項証明書)に「会計監査人」が記載されます。
会計参与の設置
「会計参与の設置」では、監査法人、公認会計士、税理士法人、税理士を「会計参与」として会社に置いている場合に加点されます。
このような会社は「会計参与設置会社」と呼ばれ、登記簿(登記事項証明書)に「会計参与」が記載されます。
経理責任者による自主監査
「経理責任者による自主監査」では、自社内にいる
- 公認会計士
- 会計士補
- 税理士
- 公認会計士、会計士補、税理士になれる資格を有する者(登録は不要)
- 登録経理士の1級合格者
上記に該当する経理責任者が、自主監査をした場合に加点されます。
具体的には「経理処理の適正を確認した旨の書類」と「建設業の経理が適正に行われたことに係る確認項目」を提出して確認します。
公認会計士等の数
「公認会計士等の数」では、公認会計士をはじめ下記の資格者が常勤の役職者として勤務している場合に加点されます。
- 公認会計士であって、公認会計士法第28条の規定による研修を受講した者
- 税理士であって、所属税理士会が認定する研修を受講した者
- 1級登録経理試験に合格した年度の翌年度の開始の日から5年経過していない者
- 1級登録経理講習を受講した年度の翌年度の開始の日から5年経過していない者
- 2級登録経理試験に合格した年度の翌年度の開始の日から5年経過していない者
- 2級登録経理講習を受講した年度の翌年度の開始の日から5年経過していない者
平成28年度以前に1級又は2級の登録経理試験に合格した者であっても、令和5年3月31日までは引き続き経審上の評価対象とする経過措置が設定されています。
建設業の経理の状況(W5)の点数
建設業の経理の状況(W5)の点数は
- 監査の受審状況
- 公認会計士等の数
それぞれの項目ごとに計算を行います。
監査の受審状況の点数
「監査の受審状況」の点数は以下の表のとおりとなります。
項目 | 点数 |
会計監査人の設置 | 200 |
会計参与の設置 | 100 |
経理処理の適正を確認した旨の書類の提出 | 20 |
これらに該当する場合に、それぞれの点数に0.95を掛けることでW評点を出し、最終的にW1~W9までの合計に0.15を掛けることでP点を算出します。
「公認会計士等の数」の点数
「公認会計士等の数」の点数は、まず、以下の表から、自社の有資格者の人数に応じて数値を合計します。
資格の種類 | 数値 |
公認会計士であって、公認会計士法第28条の規定による研修を受講した者 | 1 |
税理士であって、所属税理士会が認定する研修を受講した者 | 1 |
1級登録経理試験に合格した年度の翌年度の開始の日から5年経過していない者 1級登録経理講習を受講した年度の翌年度の開始の日から5年経過していない者 | 1 |
2級登録経理試験に合格した年度の翌年度の開始の日から5年経過していない者 2級登録経理講習を受講した年度の翌年度の開始の日から5年経過していない者 | 0.4 |
そして、上記の数値の合計を下記の表に当てはめて点数を出します
年間平均完成工事高 点数 | 600億円以上 | 600億円未満 150億円以上 | 150億円未満 40億円以上 | 40億円未満 10億円以上 | 10億円未満 1億円以上 | 1億円未満 |
100 | 13.6以上 | 8.8以上 | 4.4以上 | 2.4以上 | 1.2以上 | 0.4以上 |
80 | 13.6未満 10.8以上 | 8.8未満 6.8以上 | 4.4未満 3.2以上 | 2.4未満 1.6以上 | 1.2未満 0.8以上 | ー |
60 | 10.8未満 7.2以上 | 6.8未満 4.8以上 | 3.2未満 2.4以上 | 1.6未満 1.2以上 | 0.8未満 0.4以上 | ー |
40 | 7.2未満 5.2以上 | 4.8未満 2.8以上 | 2.4未満 1.2以上 | 1.2未満 0.8以上 | ー | ー |
20 | 5.2未満 2.8以上 | 2.8未満 1.6以上 | 1.2未満 0.8以上 | 0.8未満 0.4以上 | ー | ー |
0 | 2.8未満 | 1.6未満 | 0.8未満 | 0.4未満 | 0 | 0 |
自社の年間平均完成工事高と有資格者の数値から点数を導きだし、それぞれの点数に0.95を掛けることでW評点を出し、最終的にW1~W9までの合計に0.15を掛けることでP点を算出します。
さいごに
今回は「建設業の経理の状況(W5)とは?」について書いてきました。
この項目は減点はありませんが、難易度の高い資格を持つ人や、それなりの規模の会社でないと設置する意味のない機関を設置しなければなりません。これらの中では「公認会計士等の数」にある「2級登録経理士」は経理経験者であれば取りやすいかと思いますので、資格取得にチャレンジしてみてはいかがでしょうか。
また、令和3年より「公認会計士等の数」の評価項目の見直しがされるとも言われており、それぞれの資格を持っているだけでなく、実際に登録していることが求められるようなりました。
「登録経理士(建設業経理士)」をお持ちの方で講習を受講していない場合でも、令和5年3月31日までは1級又は2級の登録経理講習を受講していなくても経審上の評価対象となりますが、期限が近づくと席が埋まってしまう可能性が高いので早目に受講してしまった方がいいでしょう。
最後までお読みいただきありがとうございました。