経営事項審査とは?【経審】

経審とはイメージ

こんにちは!建設業許可・経審専門の行政書士栗原です。

建設業許可をお持ちの皆様、「経審」をご存知でしょうか?「経営事項審査」を省略したことばです。入札をお考えの方であれば聞いたことがあるかもしれません。

さて、建設業では発注者によって「民間工事」と「公共工事」に分けられます。「民間工事」は一般的には住宅やマンションなどの工事が、「公共工事」では道路や橋などの社会に必要な施設の建設を目的とした工事が中心です。

このうち「公共工事」を行うためには、官公庁である国や省庁、地方公共団体や独立行政法人が行う「入札」に参加し、落札することが必要です。

そのためには、建設業許可、経営事項審査、入札参加資格審査、入札、契約といった様々な制度、手続きが複雑に絡みます。

そして、この公共工事の入札に参加するためには「経営事項審査」を受けなければならない、という構造になっています。

また、この経営事項審査の結果を元に官公庁が格付けを行うため、公共工事の入札に参加している建設業者にとっては非常に重要な手続となっています。

今回は、この「経営事項審査」の概要・全体像をお伝えします。

ちなみに、行政書士や入札参加をしている建設業者では「経営事項審査」を略して「経審(けいしん)」と呼んでいます。玄人っぽいですよね。笑

少し長めの記事になっていますが、分かりやすく解説していますので、最後までお付き合いくださいませ~。

目次

経営事項審査(経審)を受けるには?

公共工事の入札へ参加するために経営事項審査(経審)を受ける必要があることは先ほど書いた通りですが、この経営事項審査(経審)を受けるためにも条件があります。

それは、

  1. 建設業許可を受けていること
  2. 決算変更届(事業年度終了報告書)を提出していること

この2点です。つまり、そもそも建設業許可を取得していなければ、経営事項審査(経審)を受けることもできない。ひいては、公共工事の入札に参加することができない、ということになります。

建設業許可・決算変更届(事業年度終了報告書)については、以下の記事をご確認ください。

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経営事項審査(経審)の審査を行うのは、都道府県知事又は国土交通大臣です。

都道府県知事と国土交通大臣のどちらへ申請をするかは、建設業許可の種類により異なっており、

  • 都道府県知事許可の場合は都道府県知事
  • 国土交通大臣許可の場合は国土交通大臣

となります。申請する窓口は主たる事務所のある各都道府県の建設事務所や建設関係の担当課です。

経営事項審査(経審)とは?

経営事項審査(経審)は、建設業者の経営状態や経営の規模等を自社の決算日を基準にして審査を行うものです。この基準となる日を審査基準日と呼び、一般的には決算日が審査基準日となります。

また、経営事項審査(経審)では建設業での売上高である「完成工事高」をはじめとして、事業の規模や自社に所属する技術者の人数、社会性などの各項目を数値化し、評価が下されます。この評価が記載されたものを「総合評定値通知書」といい、ここまでの手続を総称して経営事項審査(経審)と呼んでいます。

そして、発注者となる官公庁は、この「総合評定値通知書」の数値を客観的評価として、さらに、発注者ごとの評価基準となる主観的評価を加味してそれぞれの建設業者の格付けを行います。

総合評定値(P点)は許可を受けた工種ごとに請求しますが、許可を受けている工種の全てで受けなければならないものではありません。自社の受注状況や地域ごとの公共工事発注状況などを見極め、必要な工種で総合評定値(P点)請求を行うといいでしょう。

経営事項審査(経審)を受ける目的

建設業者としては、入札に参加するために受けなくてはならない経営事項審査(経審)ではありますが、発注者である官公庁の側からも必要性があります。

官公庁としては、公共工事は国民や企業から預かった税金を使って行うものであるため、「経営基盤のしっかりとした建設業者に工事を施工してもらいたい」ということが念頭にあります。

とはいえ、信用のできる特定の建設業者に発注をしていたのでは、税金を特定の事業者の利益のために使っているともいわれかねません。そのために「入札」という制度が作られました。

そして、この入札制度を実効性のあるものとして機能させるために、発注者側も経営事項審査(経審)を役立てている、ということになります。

そのため、建設業者としては、経営事項審査(経審)を利用して、「自社は経営内容や事業規模、施工能力など、公共工事を受注するのに十分な体力がある」ことを証明することとなります。

経営事項審査(経審)の結果通知書を受け取るまでの流れ

経営事項審査(経審)において、「総合評定値通知書」を受け取るまでのおおまかな流れは以下のようになります。

  1. 事業年度が終了。決算を行う。
  2. 経営状況分析を受ける
  3. 決算変更届(事業年度終了報告書)の作成・提出
  4. 経営規模等評価・総合評定値の請求(経審)
  5. 審査終了後、「総合評定値通知書」受け取り

経審の流れイメージ

気を付けたいのが、この「総合評定値通知書」を受け取ることがゴールではない、ということです。「総合評定値通知書」があるからといって、自動的に入札に参加できる訳ではなく、この結果を元に入札に参加するための手続きをします。これを「入札参加資格審査申請」と呼びます。この申請は入札を行っている官庁ごとに行います。(省庁、都道府県、市町村など)

この「入札参加資格審査申請」を申請し、官庁ごとのランク付け、格付け結果に基づいて入札に参加することとなります。この審査は2~3年に一度、年度が替わる前に行われます。通常、秋ごろから年明けごろまでに行われる所が多いかと思います。埼玉県では新規が9月~10月、更新が10月~11月ごろにかけて申請を行います。また、この定期に行われる審査とは別に、年に何回か入札に参加できる業者の追加申請があります。

総合評定値(P点)の計算方法

総合評定値のことを「P点」と呼び、建設業許可を受けている業種ごとに計算されます。(総合評定値請求をする/しない・業種間での積み上げ等は説明がややこしくなるため省きます。)

このように、総合評定値やそれを構成する各評価項目の評点は、アルファベットと数字を組み合わせて表現されます。

そして、「P点(総合評定値)」の計算は

P=(X1×0.25)+(X2×0.15)+(Y×0.20)+(Z×0.25)+(W×0.15)

で求められます。

「X1、X2、Y、Z、W」という評点にそれぞれの評点の持つ割合を掛けます。

この割合を合計すると100%となるように設定されています。

また、これらの評点は

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  • Y=経営状況
  • Z=技術職員数および元請完成工事高
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をそれぞれ数値化したものとなっています。

その他

これらのほか、経営事項審査(経審)には、審査手数料、審査期間、有効期間が定められています。

審査手数料

審査手数料は、審査を受ける業種数によって異なります。

業種数 審査手数料  業種数 審査手数料 業種数 審査手数料
1業種 11,000円  11業種 36,000円 21業種 61,000円
2業種 13,500円 12業種 38,500円 22業種 63,500円
3業種  16,000円 13業種  41,000円 23業種 66,000円
4業種 18,500円 14業種  43,500円 24業種 68,500円
5業種  21,000円 15業種 46,000円 25業種 71,000円
6業種 23,500円 16業種  48,500円 26業種 73,500円
7業種 26,000円 17業種 51,000円 27業種 76,000円
8業種 28,500円 18業種 53,500円  28業種 78,500円
9業種 31,000円 19業種 56,000円 29業種 81,000円
10業種 33,500円 20業種 58,500円    

なお、建設業許可の業種数は、2019年4月現在、29業種となっています。

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審査期間

経営事項審査(経審)の審査期間は、審査日から概ね2週間程度です。

ただし、審査庁により若干異なる場合や、確認事項・追加書類を求められた場合には審査期間が延びることがあります。

有効期間

経営事項審査(経審)における総合評定値の有効期間は、審査基準日(決算日)から1年7か月です。

気を付けなければならないことは、「審査日」や「総合評定値通知書の発行日」ではなく、【審査日基準日(決算日)から1年7か月間】とされている点です。

ただし、実質的には有効期間は1年間であると認識した方がいいと思います。

なぜかといいますと、

  1. 決算日
  2. 税務申告→納税
  3. 決算変更届(事業年度終了報告書)提出
  4. 経営事項審査(経審)

と、決算日から必要となる手続きがあるため、さらにこれを毎年繰り返す必要があるため、です。

これを具体的なスケジュールに落とし込むと、例えば、12月決算の会社では

  1. 12月31日:決算日
  2. 2月末:税務申告・納税
  3. 4月末:決算変更届(事業年度終了報告書)提出
  4. 5月末:経営事項審査(経審)
  5. 6月中旬~末:総合評定値通知書受領

と、期限に余裕を持たせて進めると、総合評定値通知書を受け取るのは6月中旬~6月末となります。

この時点で、審査基準日(決算日)から6か月経過していることがわかります。さらに、翌年も同じスケジュールで経営事項審査(経審)を受けます。するとどうでしょう?

経営事項審査(経審)の有効期間は「審査基準日(決算日)から1年7か月」でしたね。もうおわかりだと思います。

最初の経営事項審査(経審)の審査基準日(決算日)から1年6か月後に翌年の経営事項審査(経審)の結果通知が来る、ということになります。ここでも図を使いましょう。

有効期間イメージ

もちろん、手続きを前倒しで進めることで、早く経営事項審査(経審)の結果を受け取ることは可能です。

かといって、経営事項審査(経審)を受ける時期を調整して、1年置きぐらいにに受ければいいや、というものでもありません。自社の経営状況を客観的に把握することができますし、何より、入札参加をしている自治体へ毎年「総合評定値通知書」を求められるからです。

結果として、少なくとも入札参加をしている事業者さんは、毎年経営事項審査(経審)を受ける必要がある、ということとなります。

まとめ

いかがだったでしょうか。少々長い記事となってしまい、すみません。わかりやすさ重視で書いてきた結果とお考えいただければ幸いです。

ともあれ、経営事項審査(経審)について

  • どうして経営事項審査(経審)を受けるのか?
  • どこで経営事項審査(経審)を受けるのか?
  • 手続きやスケジュール
  • 手数料や有効期間

など、基本的な事項は網羅してきました。この記事をお読みいただけば、経営事項審査(経審)の全体像をしっかりと把握できるものと考えています。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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この記事を書いた人

こんにちは!
行政書士のくりはらたかしと申します。
埼玉県さいたま市中央区に事務所があります。

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